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義務だけではない!カーボンクレジットの役割と、付加価値を高めた利活用【バイウィル代表ブログ Vol.3】

こんにちは。バイウィル代表取締役 CEOの下村です。
 
バイウィル代表noteも第3回目。今回からは、弊社の事業内容とともに、カーボンクレジットやGXについてご説明していきます。
まず、弊社の事業は、環境価値に関して「創る」「活用する」「学ぶ」「発信する」という4つの事業から成ります。

バイウィルの4つの事業

本日は「環境価値提供事業(クレジット売買)」のご説明として、カーボンクレジットの本質的な役割や、さらなる付加価値をつけた活用方法についてお伝えできればと思います。


世界的なトレンドとなった「カーボンニュートラル」

脱炭素社会に向けた取り組みは世界的なトレンドであり、プライム上場企業をはじめ、日本でも多くの企業や自治体が「カーボンニュートラル」を目指すよう求められています。
 
CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引いた合計が、ゼロになることを指す「カーボンニュートラル」。これに関しては、各国が達成すべき時期を定めていますが、日本では多くの先進国と同様に、2050年のカーボンニュートラル実現を目標としています。
 
その実現の鍵を握る各企業のカーボンニュートラルは、自社でできる温室効果ガス排出削減を進めることが基本となります。しかし、自社だけでは削減しきることのできない排出量については、カーボンクレジットによって埋め合わせることで、実質ゼロとみなすことができます。これを「カーボン・オフセット」といいます。

弊社は、お客様のカーボンニュートラルをともに推進すべく、日本で認証を受けたカーボンクレジット「J-クレジット」に限らず、非化石証書や海外証書など、幅広く調達のご支援を行っております。

カーボンクレジットは「義務を果たす」ためだけのものではない

さて、カーボン・オフセットを検討される需要家の皆様に対し、私たちが特にお伝えしたいのは、カーボンクレジットは「義務を果たす」ためだけのものではないということです。バイウィルは、この考え方を社会に広めていきたいと考えています。
 
目標を宣言しているから、投資家の期待に応えなくてはいけないからなど、クレジットによるカーボン・オフセットに対してはどうしても義務感が伴うものです。もしくは、「お金で解決する方法」として、ややネガティブな見られ方をすることも未だに珍しくありません。
 
ですが実際は、買い手の方々がカーボンクレジットを活用することによって、脱炭素活動を頑張る作り手の方々に資金が還元され、さらなる活動に投資できる環境が整う。それこそが、本来カーボンクレジットに期待された役割です。

つまり、カーボンクレジットの購入は、創出元の脱炭素活動の促進を支援すること、ひいては、日本や世界の脱炭素トレンドを後押しすることにも繋がるといえます。

とはいえ、お金をかけてカーボンクレジットを購入するということは、ある意味、企業にとって投資でもあります。そのため、さらなる付加価値を目指したクレジット活用を考える企業様も少なくありません。
 
たとえば、「カーボンクレジットの地産地消」。これは、それぞれの地域に根ざした企業や、縁のある企業が、その地域で創られたカーボンクレジットを購入することを指します。カーボンクレジットの地産地消についてはJ-クレジット制度が推奨している(*1)だけではなく、賛同し、自主的に進めている自治体も増えています。
地元由来のカーボンクレジットを選んで活用することにより、地元の経済発展と環境保全を金銭面から支援できるだけでなく、「地元貢献のPR」にも繋げることができるのが、クレジットがもつ強みです。
 
さらに、自社が属する「サプライチェーンの保護」という取り組みにも、カーボンクレジットは活用できます。
たとえば、米を使った食品を提供する企業が、稲作による方法論でできたJ-クレジットでオフセットをする。はたまた、製紙会社が、森林経営によって創られたJ-クレジットを購入する。このように、自社のサービス・商品のサプライチェーンに関わるクレジットを利活用することで、「サプライチェーンを守る」という企業の意志を示すこともできます。

このような、単なるオフセットの枠組みを超えたカーボンクレジット利活用の一例として、広島県尾道市の取り組みをご紹介します。
尾道市では、干潟や藻場の保全活動を進めることで、海洋生物によって吸収されたCO2をクレジット化した「ブルーカーボン」を創出されています。

 2023年に創出されたブルーカーボンは16社にもおよぶ事業者に購入されましたが、そのほとんどが広島県に本社や工場を置くなど地域に関わりがあるだけでなく、水産業や船舶にまつわる事業を営む企業様も多く含まれました。(*2)

これにより、購入した事業者は、広島県や尾道市の経済・環境を支援すること、そして、自社の事業を支える存在である広島の海の保全に貢献すること、この2つの意志を示したといえます。 

つまり、単なる「オフセットのための購入」だけではなく、金銭的な支援としても、自社の考えをPRするという意味でも、さまざまなプラスの効果をもたらすことができるのが、カーボンクレジットの魅力なのです。
 
そのように考えると、「どこで」「どのような」クレジットを調達するのか、という視点が重要であることがわかります。
だからこそ弊社では、全国各地でクレジットの創出をご支援し、さらにはそれを私たちの手で需要家の方へお届けすることで、「生産者が見えるJ-クレジット」を流通させるべく動いています。

カーボンクレジットの安定調達は、作り手への支援から

重ねてにはなりますが、カーボンクレジットは創出元(作り手)と需要家(買い手)が力を合わせて、カーボンニュートラルという目標を達成するために作られた社会的なツールです。
 
日本で創出・認証される「J-クレジット」は現在、大幅な需要過多となっており、温室効果ガスの排出量と比べても供給数はまったく足りていません。
 
需要のある方はたくさんいるのに、作り手の数も、作られるJ-クレジットの数も足りていない。この状況を打開するためには、まずは作り手の脱炭素活動を継続させる支援が必要だと考えます。
 
では、作り手の方々の脱炭素活動を後押しするには、どのようなことが必要でしょうか。J-クレジット創出に取り組む際、作り手となる方々がもっとも不安に思われるのが、「作ったJ-クレジットは本当に売れるのか」ということです。
弊社がクレジット創出をご支援する場合、手続きにかかる費用や手間はすべて弊社で負担しますが、それでも、太陽光パネルの設置費用や省エネ設備への買い替えなど、少なからず投資は必要になるものです。本当に作ったクレジットが売れるのか、不安になられるのも無理はありません。
 
ですので、私たちがクレジット創出をご支援するにあたっては、バイウィルとしてクレジット売買の実績も並行して積みかさねていくことが、「作ったクレジットは売れる」という安心感に繋がるのではないかと考えています。そのため、弊社が創出したクレジットに限らず、多くのクレジットや証書を需要家の皆様にお届けしているのです。
 
また、この「安心感」というのは、買い手となる需要家の皆様にとっても同様ではないかと考えます。
2050年のカーボンニュートラル目標、そして、その手前に2025年、2030年などの中間目標を据えておられる企業様も多いなかで、今後さらにカーボンクレジットの需要が高まり、ますます手に入れづらくなることは想像に難くありません。

そんな状況でも、これから何年にもわたって必要になるカーボンクレジットを安定的に調達するためには、当然ですが、安定的な創出があることが求められます。 

需要家の皆様のお力で、作り手の方々がクレジット創出するための資金を先に調達できれば、創出に繋がる脱炭素活動はますます盛んになります。つまり、安定的な調達のために、先に作り手を増やすための投資をする、という方法もあるのです。

実際に、全日本空輸株式会社(ANA)は、カーボンクレジットへの先行投資の動きをとっています。
大気中からCO2を取り出し、貯留したり再利用したりする「DAC(Direct Air Capture)」と呼ばれる技術。ANAはこの先進的な技術をもつアメリカ企業と提携をし、2025年から3年間分にものぼるDAC由来カーボンクレジットをすでに確保しています。

 この例ほど大きな話ではないですが、弊社においても、カーボンクレジット創出のポテンシャルがある自治体様などをバイウィルにご紹介くださり、創出できたカーボンクレジットを買い取ると約束してくださっている需要家の方々もおられます。
J-クレジットをはじめとしてカーボンクレジットが争奪戦である今、出資や提携などという形で作り手を支援し、クレジットを「先に確保する」という動きが主流になっていくことが予想されます。
 
ですが、カーボンニュートラルへの動きがアグレッシブになっていくとしても、多くの企業では、潤沢な人員は割けないもの。ましてや、カーボンクレジットの創出担当者を置くことは難しいと思います。
 
そのために、私たちのような会社がいます。

これまでの記事でも度々お伝えしておりますが、カーボンニュートラルはどこか一社が頑張ったからどうにかなるものではありません。その一角を担う「カーボンクレジット」という社会ツールにおいても、作り手と買い手、そのいずれもの協力が必要不可欠です。
 
その協力体制を強め、加速するために、私たちがハブとなります。「バイウィルがいれば、いつでも安定してクレジット調達できる/販売できる」と思っていただける存在になれるよう、全国での活動をより一層進めてまいります。 

・・・・・

*1:J-クレジット制度『地元産クレジットを活用したクレジットの地産地消スキーム』(https://japancredit.go.jp/case/scheme/03/
  
*2:尾道市のブルーカーボン購入者は、以下のページからご確認いただけます
ジャパンブルーエコノミー技術研究組合『令和 5 年度(2023 年度)第 1 回Jブルークレジット®購⼊申込者公募結果の公表 ~ ブルーカーボン・クレジットの公募について ~』
https://www.blueeconomy.jp/wp-content/uploads/press/20230731JBE-press.pdf